フェンスの向こうのそれは、原形はとどめているものの、確実に老朽化の道をたどっているようだった。
いつから使われなくなった団地なのか。そんなことは分からないが、人の手が入らなくなった人工物の放つ異様な雰囲気が辺りを包んでいた。
ふと目を落とすと、フェンスの向こうから生気の弱々しい花が、助けを求めるかのようにじっとこちらを見つめていた。
時間(とき)の流れを忘れて、僕らはそこに立ちすくんだ。フェンスの向こうは、今は冷たい雰囲気だが、昔は温かな雰囲気をかもしだしていた瞬間があったのかと思うと複雑な気持ちになった。
そうして、僕らはその廃墟を後にした。
< >
[ D60 AF-S DX NIKKOR 18-55mm f/3.5-5.6G VR ]
この記事にトラックバックする